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広尾 晃の気まぐれ寺ばなし
第42回 司馬遼太郎『空海の風景』
司馬遼太郎の代表作といえば
『竜馬がゆく』『項羽と劉邦』などがあげられるでしょうが、
私にとっては『空海の風景』ほどおもしろい作品はありません。
すでにこのコラムでも紹介していますが、
空海という遥か千二百年も昔の人物に焦点を当て、
乏しい資料を織り紡いで稀有の人物像を生き生きと描いています。
また、ライバルである最澄もステレオタイプで対置するのではなく、
正直で高潔な魅力ある人格に描いています。
そして新しい文明、科学としての「仏教」を切望する時代の空気の中で、
2人が次第に袂を分かち、対立関係になってゆく図式がドラマチックに提示されています。
これほどおもしろい作品はちょっとないと思います。
奈良時代から平安時代にかけての仏教史の本や資料はいろいろありますが
『空海の風景』ほど当時の仏教界を生き生きと描いた著作はないと思います。
変わろうとする当時の日本を大きな視点で描いた本も数少ないのではないでしょうか。
この稿も最澄、空海の時代については『空海の風景』をベースにしています。
司馬作品の中ではやや異色で、とっつきにくい印象もあるが、
『空海の風景』は絶対におすすめです。
空海が興した東寺(京都市)
プロフィール
広尾 晃(ひろお・こう)
1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライター、プランナー、ライターとして活躍中。日米の野球記録を専門に取りあげるブログサイト「野球の記録で話したい」でライブドア奨学金受賞。スポーツ専門テレビ局「J SPORTS」でプロ野球番組のコメンテーターも務めている。著書に『巨人軍の巨人 馬場正平』、『プロ野球なんでもランキング』、『プロ野球解説者を解説する』(以上、イースト・プレス刊)など。
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