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広尾 晃の気まぐれ寺ばなし
第32回 超人、役行者
仏教が広まろうとする時期の日本には、仙人のような能力を持った人が山野に住んでいて、
不思議な力で功を立てたり、人に仇をしたりしました。
その代表格が役小角(えんのおづぬ)です。
聖徳太子が亡くなった頃に生まれ、8世紀初頭に死んだといわれています。
役行者の名前で知られるこの人物は、帰化人の家系である賀茂氏の出であるとされ、
大和の葛城山系に住んで呪術で人を惑わしたために伊豆に流刑になりました。
役行者は小鬼を手足のように使ったといいます。
また、藤原鎌足の病をいやしたともいわれます。
史実に現れる記録はごくわずかですが、こうした人物が7世紀後半に存在したことは事実のようです。
役行者は仏教とは無関係の存在でしたが、のちには天台宗、真言宗系の修験道の始祖とされ、
江戸時代には「神変大菩薩」という仏の名を与えられます。
今では多くの寺院の境内に行者堂が立てられ、高下駄を履いた役行者像がまつられています。
天狗も役行者がモデルだという説もあります。
古来より日本の山々には、人を超人に変える力があったといわれてきました。
役行者はその始まりの一人です。
満願もその系統でしょう。最澄や空海も山野を巡って修行をしました。
そういう意味では、役行者は日本の仏教史に欠かせない人物の一人といってもよいでしょう。
奈良県吉野町の行者堂
プロフィール
広尾 晃(ひろお・こう)
1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライター、プランナー、ライターとして活躍中。日米の野球記録を専門に取りあげるブログサイト「野球の記録で話したい」でライブドア奨学金受賞。スポーツ専門テレビ局「J SPORTS」でプロ野球番組のコメンテーターも務めている。著書に『巨人軍の巨人 馬場正平』、『プロ野球なんでもランキング』、『プロ野球解説者を解説する』(以上、イースト・プレス刊)など。
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