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広尾 晃の気まぐれ寺ばなし
第22回 東大寺のプロデューサー、良弁
このとき建てられた金鐘寺の建物の一部は、今も残っています。
現在の東大寺法華堂(三月堂)がそれだといわれています。
法華堂には有名な不空羂索観音が安置されていますが、
創建当時は金鐘寺羂索堂と呼ばれていたようです。
金鐘寺の創建は730年前後のことといわれています。
この寺院の建立に深くかかわっていた僧侶に良弁がいます。
良弁は近江の生まれで幼いころに鷲にさらわれて
奈良の杉の木に引っ掛かっているのを高僧義淵に助けられ、
僧侶となったという伝説があります。
当代市川猿之助が元気なころに演じて女性の涙を絞らせた
「良弁杉の由来」のもととなった話ですが、史実ではないようです。
相模国の出身とも、近江の国の出身ともいわれ、前半生はよくわかっていません。
良弁は、金鐘寺に住んで聖武天皇、光明皇后の信任が篤かったといいます。
滋賀県の栗東市付近は良弁の生地といわれています。
栗東市の南部に広がる金勝山には、
奈良時代から「金勝寺25ケ寺院」とよばれる寺院が開かれ、
一大仏教圏が存在したといわれます。
良弁はこの仏教圏を代表する人物として奈良に招かれたのではないかとの説もあります。
東大寺の大仏は、最初は立冬からもほど近い近江紫香楽宮で造営されます。
こうした背景には良弁など近江の仏教集団の影響があったのかもしれません。
金鐘寺に深くかかわった良弁の建立になるとされる滋賀県栗東市の金勝寺の軍荼利明王
プロフィール
広尾 晃(ひろお・こう)
1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライター、プランナー、ライターとして活躍中。日米の野球記録を専門に取りあげるブログサイト「野球の記録で話したい」でライブドア奨学金受賞。スポーツ専門テレビ局「J SPORTS」でプロ野球番組のコメンテーターも務めている。著書に『巨人軍の巨人 馬場正平』、『プロ野球なんでもランキング』、『プロ野球解説者を解説する』(以上、イースト・プレス刊)など。
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