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著者に聞く!

『海を飛ぶたね』
著者 暁ーAkatsukiーさんに聞きました

言葉を尽くしても伝わらなかったメッセージが
アートの力で響いた瞬間

まず著者の暁ーAkatsukiー先生からご覧になって、『海を飛ぶたね』は、ひとことでいうとどのような本ですか? 

読む人にとって、本当の自分を見つめるきっかけになる絵本となることを願っています。

 

『海を飛ぶたね』は単なる絵本というだけでなく、「アートセラピー体験絵本」ということですが、読者の中には、「アートセラピー」をご存じない人も多いかと思います。どのようなものなのか、簡単に説明いただけますでしょうか。

アートセラピーは、カウンセリングの現場でも用いられる心理療法の一つです。
創作活動自体が癒しといえますが、暁ーAkatsukiーのアートセラピーでは、言語化しにくい曖昧な心を、アートの力でイメージ化することで、自分の本当の感情に気づいていくことを目指しています。
多くの言葉を重ねるよりも、一つの絵文字で自分の心を伝えられること、ありますよね。絵文字というアートでコミュニケーションする。それもアートセラピーの一種だと、考えると、身近に感じられますよね。

 

絵文字もアートセラピーですか! それをお聞きして、なんだかすとんと落ちました。
ところで暁先生は、子どもさんとのコミュニケーションに悩むなかで、「アートセラピー」に出会われたとお伺いしました。アートセラピーに出会う前、お子さんとのコミュニケーションはどのような感じだったのですか?

こどもが4歳になる位まで、親子のコミュニケーションがうまく取れず、悩める日々を過ごしていました。言葉が遅く、自分の気持ちを伝えられない、そんなイライラからなのでしょうか、24時間、寝言でも怒っているようなこどもでした。
公の場で、我が子が怒っているのを見ると、いたたまれず、親子で無人島に逃げたい!なんて思った時もありました。

 

「怒り」のパワーというのは大変なものですが、特に子どもの場合、全力で来るので、ものすごいでしょうね。
そういった中で、どのようにしてアートセラピーに出会われたのですか?

もともと、こどもと関わることが好きで、美大生時代には、幼稚園の絵画教室の講師や、おもちゃの実演販売のアルバイトをしておりました。おもちゃ会社では、あまりにも売上が良く、どうしたら子ども心を掴めるのか、なんていう社員研修ビデオに出演したこともありました。
美大卒業後はジュエリーデザイナーとして、企業勤務の後、フリーとなり、アーティストの衣装に関わる仕事などもしておりました。人とのふれあいが好きなので、ジュエリー専門学校の講師も11年ほど続けました。
不妊治療を経て、やっとの思いでこどもを授かることができ、待ち望んでいた育児がスタートしました。
しかし…こどもの気持ちを掴むのが得意なはずなのに、我が子の気持ちはさっぱり分からない。こどもには人気があったはずなのに、我が子にはなぜこんなにも人気がないのか。袋小路に入ったように追い詰められていきました。
そんな渦中に、ニューヨークに4ヶ月短期留学する機会があり、こどもを現地の保育園に預けました。朝7時から夜7時の託児で、ジュエリーの勉強に熱中。帰国する頃には、終わらない魔の2歳児モンスターに拍車がかかり、怒鳴りつけることばかりで、自己嫌悪の毎日でした。
ジュエリーデザインに関する資格を探していた折りにふと目に入った「チャイルドセラピスト」の文字。今、最優先はこれだ!とひらめきました。いえ、すがりついたと申すべきでしょうか。発達心理学、アートセラピー、プレイセラピー、箱庭療法、音楽療法、など総合的に学べる講座でした。

 

アートセラピーとは、どんなふうにおこなわれるのか、簡単に教えていただけますか?

電話をしながらぐるぐる落描きをしたことはありますか?
あれもアートセラピーです。色や形を紡ぐことで、気持ちを発散する。
それに併走するのがセラピストの役割です。
事前カウンセリングに比重を置く場合もありますが、まずは、クライエントが取り組みやすい創作活動で、発散していただき、生み出されたものに対して、語っていただき、クライエントの気づきに寄り添います。

 

アートセラピーによって、お子さんとの関係がどのように変わりましたか?

こどもが劇的に変わった! 怒らなくなった! 意思の疎通ができる! 育児が楽になった! と当時は思っておりました。
しかし、今、振り返ってみると、変わったのは母である私も同じだったのです。
私が癒され、こどもを受け入れる準備ができたことが大きかったのです。
掛け違えていたボタンが、かみ合っていくように、打てば響く関係になっていきました。現在、アートセラピー教室を開室しているのですが、こどものみでなく、親子セラピーや、親に向けたセラピーも大切にしているのは、自分の経験からです。

次に、暁ーAkatsukiーが描いた絵をまじえて具体的に説明します。

 

 

*お互いの心の扉が開いた体験*
「自分の感情を絵にしてみる」というアートセラピーの課題。
暁ーAkatsukiーは、そのとき、一日の99%を占めている「イライラ」と、たまにやってくる「嬉しい」という感情を絵にしてみました。

 

◎99%の感情「イライラ」

イライラ.jpg

 

こどもが伝えたい、オレンジ色の気持ちを正確に捉えられず、
違う色(薄い黄色)で受け止めてしまうことにより、すれ違い、双方の苛立ちがビリビリと放電されている状態。
英語では「ゆでたまごの殻を敷き詰めた部屋を歩くよう」という表現があるそうですが、まさにそんな感覚でした。

 

 

◎1%の感情「嬉しい」

嬉しい.jpg

 

こどもの感情と、母の感情がピタリと重なった時には、心が光り輝き、木漏れ日のような温かさが満ちる。この1%の感情があると、育児の大変さを嬉しさが凌駕する。
「この嬉しい1%があると、育児の大変さがチャラになるから、育児ってずるいですよね」なんて話しておりました。
モヤモヤした自分の気持ちを視覚化すると、心が整理され、すっきりデトックスされた気分でした。

 

◎帰宅後、こどもに2枚の絵を見せると……
一枚目の絵を「キライッ」と放り投げ(!)、二枚目を指差した後、床にコロンと転がり膝を抱え丸くなりました。その後、母の洋服、チュニックの中にごそごそと潜り込み「ママのお腹の中」と言いました。なぜ、そんなボキャブラリーがあったのか、今でも謎です。そして、その時を境に、こどもは怒った時には、母の服にもぐりこんだり、ハグしてあげることで、落ち着き、感情が穏やかになっていきました。
その日までは、手をつないだり、ハグすることをあまり好んではいなかったので、驚きの変化でした。たまねぎの薄皮を剥いていくように、イライラが徐々に減り、お互いを信じて待てる様になったことで、親子のコミュニケーションもスムーズになっていきました。二枚目の絵を見せた時が、何百回、耳から言い聞かせても伝わらなかった、「母は息子を愛している」ということが、アートによって伝わった瞬間だったのかもしれません。百聞は一見にしかず、ですね。

 

 

まさに感動の瞬間、という感じがします。お子さんも大きくなられたことでしょうね。最近はどのように過ごされていますか?

現在10歳のこどもと、おしゃべりをし、アートで遊び、毎日じゃれあっております。アートセラピーのおかげで、ハグが大好きになったこども。ハグをしなくなるタイミングを逃しております。5年後、思春期、まっ只中にはどうなっているのでしょうか。こどもとの日々は迷いの連続ですね。反抗期はあった方が良いと聞きますので覚悟はしていますが、今の心地よい距離感で、悩みの相談に乗っていけたら楽しいですね。

 

本当に育児は迷いの連続で、心配はつきないですが、楽しみでもありますね。
絵本『海を飛ぶたね』をみていると、色調があたたかくて、心が穏やかになります。そして、とても深いメッセージが伝わってきます。この絵本はどういう方におすすめしたいと思われますか?

心が迷子になっている方にお薦めしたいです。
TPOに合わせて、空気を読んで、協調性を求められて生きていると、本当の感情が埋もれていきがちです。
絵筆を渡され「なんでも好きに描いていいよ」と言われても「私の好きなものってなんだろう?」と固まってしまう方もいらっしゃいます。
自分で凍らせてしまった心を、自分で温めて、本来の自分が持っている感情の彩りを取り戻して頂きたいです。

 

『海を飛ぶたね』が、心が迷子になっている方の道標になったら素敵ですね。ところで絵本は、アートセラピーのなかで、どのようにつかわれるのでしょうか?

創造の世界へのスイッチとしての作用を期待して使います。絵本を読み、たねの旅を追体験するようなワークをし、絵を描いていただきます。
ワークでは、体験者にたねになって頂き、土に見立てたブランケットをかぶせます。
その包み込まれるようなぬくもりは、胎内回帰を暗喩しています。
他にも色々な使い方を工夫してくださる方がいて、一枚の絵を見て「自分はこの絵のどこにいるだろう?」と考えるだけで、今の心のありようへの気づきにつながるそうです。
絵本を読んだ後に、お花を活けると、そこに心の変化が映し出されるという声もあります。アートセラピーは絵を描くことだけでなく、創造的な活動全般に、癒しの効果を期待できるのです。

 

ますます興味がわいてきました。他に、絵本『海を飛ぶたね』のたのしみ方、ココを見てほしいなど、何かひとことございましたら教えてください。

おもて表紙の裏、うら表紙裏の絵の関連性を楽しんでいただきたいです。

 

たしかにこれは、ぜひ手にとってご覧いただきたいですね。
さいごに、暁ーAkatsukiー先生の今後の目標や、これからの夢などお聞かせください。

今年2015年夏に、ニューヨークでアートセラピーワークショップを開催してきました。
アートは世界共通語なのだと実感。英語が堪能でない私でも、来場者と深いコミュニケーションをとることができ、心震えました。
アートセラピーで、一人一人の感情が豊かになることが、人と人との深いコミュニケーションにつながると信じています。
自分を知り、相手をを知ることが、絆が深まることにつながり、ピースフルな世界になっていく。それが暁ーAkatsukiーの夢です。

 

もっともっと、アートセラピーを、多くの方に知っていただきたいですね。

今日はどうもありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

プロフィール

暁ーAkatsukiー

アートセラピーで、子どもとのコミュニケーションがスムーズになったことに感動し、

アートセラピーワークショップを定期的に開催。
絵本を活用したアート遊びを探求中。
http://www.akatsukitonttu.com
チャイルドセラピスト(NPO法人IATH)
イラストレーター

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